『ドント・ルック・アップ』は魅力的な題材を活かしきれなかった

巨大彗星(すいせい)が地球に衝突する可能性を必死に訴える2人の天文学者。だが、情報が氾濫する世界では、誰ひとりとしてその警告に耳を貸そうとせず...。 ドント・ルック・アップ - Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
Netflixで配信されている『ドント・ルック・アップ』はキャスティングがやたら豪華な映画だ。レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープにティモシー・シャラメ、さらにはアリアナ・グランデまで。
画面にはまるで輝く彗星のごとく次々とスターが現れ、「豪華だな〜」と思っているうちに時間が過ぎている。しかし、その華やかなキャスト陣のきらめきとは裏腹に、心の奥底まで揺さぶられるような感動は感じられなかった。
魅力的な題材
『ドント・ルック・アップ』は、世界滅亡を描くSFコメディ映画であり、地球に向かって進行中の巨大彗星の脅威に対処しようとする人々の奮闘を描いている。現代の情報の洪水と政治的な無関心を風刺するメッセージが織り込まれているようだ。
気候変動やコロナ禍での科学者たちの提言とそれに対する(一部の)人々の冷めた対応を見ていると、現実と地続きのテーマであるようにも感じる。
科学者がすぐそこまで迫っている危機を主張しても大衆に伝わらない、という映画前半のストーリー展開は興味深く、風刺としても鋭い切れ味を感じた。つかみは良かった。
中盤から失速…(若干ネタバレあり)
つかみは良かったものの、結局のところ延々とドタバタコメディが続いていくだけで、驚くような展開やインパクトはほとんど感じられない。せっかくのポテンシャルを生かしきれず、最後まで中途半端な仕上がりになってしまった。
ディカプリオ演じる科学者はクソ真面目キャラなのかと思っていたら、途中で浮気したり政府の広告塔みたいになったりしてついていけなかった。最終的には政府は嘘つきみたいなことを生放送で言って元のキャラに戻り、心情の移り変わりがよく分からなかった。
キャストの無駄遣い
最初に書いたようにキャスト陣は豪華だが、それぞれの俳優が十分に活かされているとは言い難い。演技が悪いとは思わないが、物語のテンポの悪さと登場人物の薄っぺらさが、俳優たちの才能を無駄にしている感が否めない。
特にティモシー・シャラメのキャラクターはそもそも登場する必要性を感じられなかった。
観る価値はあるのか?
『ドント・ルック・アップ』は特に予定のない日曜の昼下がりに映画でも観ようか、というときには最適な映画(いい意味でも悪い意味でも)。緊迫感のあるテーマとは裏腹に、観ている間は手に汗握るというよりはリラックスして楽しめる。